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その喜びが溢れる時

京浜東北線、王子駅のホームに立っていたら小学生の一団がそばへやってきた。
四年生ぐらいだろうか、20人くらいだろうか、先生に引率されつつも、わいわいと騒いでいる。
同じ車両に乗り込んだ。

「一言もしゃべるな」

先生が必死に注意する。
それでも子供たちはひそひそ声で、それぞれ楽しそうに、こっそりはしゃいでいる。
じゃれあいながらつつきあう彼らの姿は、
生きていることがただただ愉快で楽しくて仕方がないことを感じさせた。

でも、おそらくこの感慨は、きっと僕の勝手な解釈なんだとも、すぐに気が付いた。
色々な心境、環境の子らもいるだろう。心は敏感だけど、言葉が追いつかない年端なんだし。

次の駅で降りた。秘密のおまじないでも唱えてそうな、淡い声が背にあたる。

今この時、生きていることがただただ愉快で楽しくて仕方ない。
その喜びが溢れ、はしゃがないと気がすまない。

そんな 単純なことを困難にするなと、
子供らの姿を借りてやっと思える大人になっちまったのか。

だけど嘘偽りもなく感じる。
暗澹たる不安に怯え続けた小学生時代よりも、
今の方が1万倍楽しい日々を、時間を送っていると 。

月日が流れるほどに、年を重ねるほどに、人生は必ず楽しくなる。
はしゃがなくても、僕らは楽しい。
悲しみや矛盾の海を泳ぐほどに、楽しさという喜びは、尊い孤島になっていく。

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