「幻の青春金粉カレー」
教えて欲しい。
あなたにとって「青春の味」とは、何だろう?
抽象的な話ではない。食べ物の話。
(例えばそれは、やけに油っぽい学食の定食。部活帰りのガリガリ君、とか)
今日は、6年ぶりに再会した、「青春の味」の話。
北区・滝野川に「光陽楼」という中華屋がある。
それはそれはもう、昭和な感じの佇まいをしている。
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2002~3年。
僕らの食堂は「光陽楼」だった。
まだ「らくだ銀座」プロジェクトを進めていた時期。
その店の出前メニューには、★印がついている品が幾つかあった。
★印…? 名物? お薦め? 人気メニュー? どきどき…。
いつか大将に「★印にはどんな意味があるんですか!‽」と、訪ねた。
「え、特に意味はないよ」と、即答され、へこんだ記憶がある。
ともあれ、夢しかない僕らの胃袋を「光陽楼」が満たしてくれていた。
らくだ銀座プロジェクトに何かいい進展があると、林(監督)と
「今日は、カツカレーにするか!」と言って、自分らにご褒美をあげた。
カツカレー 900円 (やっぱり★印つき)
それこそ「光陽楼」の幻の一品。僕らの、青春の味。
「金粉」が、のっている。
・・・・「金粉」だ。
琥珀色のねっとりした表面に、キラキラと、金の粉。
今、この瞬間にも、世界中で何億人もがカレーを食べているだろう。
しかし、「金粉カレー」は、ここにしかない!と断言できる。
(他に金粉入りカレーを出す店があったら教えて欲しい)
カレーの味は、その不可思議な甘み・うま味で、世界最高ランクを狙うレベルである。
しかしはっきり言って、「金粉」に、味はない。味など必要ない。
なぜ大将が「金粉」を撒こうと思い立ったかも、定かではない。
謎が謎を呼ぶメニューに、若い僕らはとりつかれたのは、言うまでもなかった。
あれから6年の歳月が過ぎて、今日。
それを食べに行った。
「ああ!あの映画の!うちのオカモチ(出前に使う奴)を借りにきた、あんたら!」
大将も女将さんも、僕らのことを覚えていてくれていて、
なんだかとっても幸せだった。
「大将!カツカレーを、また食べにきたよ!」
「そうかそうか、それは有難い」
ワクワクして待った数分後、ついに再会の、幻のメニュー。
・・・・・・・あれ。
・・・・・・・金粉、ない。
でも、やっぱり美味しい、懐かしい味。
ぺろりと食べて、大将に訪ねた。
「・・・・・、昔は、金粉、乗ってなかったっけ?」
「え・・・。ないない。うちじゃないよ、それ」
「・・・・・・・」
違う! 絶対ここだよ、光陽楼!!
いくら聞いても、大将の記憶に、金粉は舞い戻ってこなかった。
追及しても仕方がないので、そのまま店を後にした。
なぞがなぞを呼ぶ幻のメニューは、更に深いなぞの谷間へ。
金粉入りカツカレー。
僕らの、「青春の味」。
それは、「滝野川の奇跡」。きっとまた、いつか会えるさ。ね、大将。
きらきらっ。
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「金粉入りカレー」、もしくは「衝撃のカレー」や、「わたしの青春の味」について、
みなさまのお便りを、心からお待ちしております。
curirin(@)fireworks-film.com ←()を外してお願いします。
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(2009.11.16 栗山宗大)